ムク木コラム

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 「この家、呼吸しやすい!」 平成16年8月
山川元志
この言葉は、昨年建築させていただいたAさんの家に、遊びに来た子供が発したものである。
そんな話をAさんから伝えていただく。なんて言葉だろうか。あまりにポイントをついていて、とても嬉しいのだが、なんだか少し悲しい気持ちにもなる。

車という閉鎖的な空間に入ると、誰でも一瞬ムッとした息が詰まる気分を味わう。
それが新車ともなれば、さらに何とも言えない臭いを甘んじて味わわねばならない。
子供が「この家呼吸しやすい」と言った、そんな背景に一体何があるのだろうか。きっとその子供の家は空気が呼吸しにくいのだろう、と容易に想像できる。しかも、普段その呼吸しにくさに気がついていなかったであろうことも。きっとそれは車の中に似ているのだ。

家の中の「呼吸しにくい空気」とは、どんなのだろうか。きっと吸いたくもない空気、よどんだ空気、清澄感のない空気、あるいはひょっとしたら、そこには少量でも毒素が含まれているのかも知れない。
一方、きれいな森の中に入ると誰でも深呼吸がしたくなる。そこは澄んだきれいな空気があるからだ。それと正反対の空気の中で暮らす。家も学校も道路上も、この子だけが特別変な環境に生活しているのではないだろう。どこもかしこもそんな「呼吸しにくい空気」が充満しているのだ。
 
A邸は、床はムクのフローリング自然塗料仕上げ、柱は檜材で12センチの太さ、鴨居などの造作材も檜材、天井はスプルース材の厚板が無塗装でむき出しである。また、真壁には珪藻土を塗って仕上げている。建具材もムク木で無塗装。合板は極力避けた。こうした仕上げで一番気をつかったのは、「揮発性の有機溶剤を少ないように」という、「消極的な目的」だけでなく、「全てが呼吸し、調湿し、脱臭力もある素材を使う」という「積極的な目的」である。家が調湿すれば空気が動く、夏が涼しい。適度な檜のフィットンチッドは森林浴をしているような気持ちよさで、外の排気ガスなどの少々のいやな臭いは、充分な脱臭力で消し去ってくれる。

とても嬉しくなった理由は、こうした住まい造りの結果が「この家、呼吸しやすい」と先入感のない子供に評価してもらったからである。一方この子は日頃呼吸しにくい空気の中暮らしているのだ。そんな現実が悲しくさせる。家、学校、排気ガスの道路や農薬づけの田畑の外部環境は病んでいるのだ。そう思わない大人こそ精神も病んでいるのだ。あるいは気づいていないのか。これは悲しい現実である。みんながそうだから気づかない。そんな誤りはいつの時代にもあった。 


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Shiki ムク木の家で暮らそう
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